ここ最近、営業部の一つ年上の先輩がよく話しかけてくる。バツイチで子供がいるらしい女の人だ。


昼休みに会社の屋上から下を眺めていると、横断歩道を渡ってきたその人、K子先輩と目が合った。はずかしかったので僕はすぐに目をそらした。それからもう一度視線を戻すと、彼女はまだこっちを見上げていた。すこし眩しそうに目を細めていた。そしておもむろにかけ出し、建物の死角へと消えた。


後ろからカンカンカンと、鉄製の非常階段をハイヒールで打つ音。K子先輩があらわれた。仁王立ちしているが肩で息をしていた。


「ああーもうダメ。やっぱ歳ね〜。ちょっと、それよこしなさい」


さっき買ったペットボトルのお茶がうばわれた。


「いま、間接キスとか思ったでしょ。なんていうか純情よね、浅野君。日記見ててもつくづくそう思うよ」


僕は凍りついた。ブリザガデインをくらったように凍りついた、そんな魔法はない。日記、日記、日記。間接キスどころではない。


僕は仕事のこと、会社のことをときどきインターネット上の日記に書いている。わかりやすい固有名詞などは出さないように気をつけていたんだけど、それでも業種に関連性の高いある言葉で検索すると、上位に出てきてしまっていたようだ。


「お宅の部長にバラされたくなかったら、○×△又金■凸しなさい」


「あうあくぁwせdrftgyふじこlp;@




サイトバレ、サイトのリアルバレっていうんですか? こわいので、こうしてときどきカモフラージュ日記を書くといいと思います。っていうか嘘八百