韓国から業者が来ていて、おれも少し話をしたんですけど。通訳のチョウさん(韓国人女性)がとても聡明だったので、一瞬にしてその人のファンになってしまったのでした。


途中で知っておどろいたことに、チョウさんは、なんと㈱テーヘン(うちの工場)のパート従業員であったのでした。もちろん㈱テーヘンは専門職の通訳を常駐させるほど大きな会社ではないです。彼女は普段は、へんな白いカッポウ着みたいのと、へんなかっこ悪い帽子を身に着けさせられて、組み立て軽作業のラインに入っている時給800円のパートさんです。アジア系のパートさんがいっぱいいるので、たまたまそのなかに韓国人のひとがいたからって、ちょうどいいやっていって、ひっぱり出されたらしい。しかし、おれはてっきり本職の通訳さんかと思いました。栗色のさらさらロングヘアー、黒ニットのワンピースを着こなし、肌は色白、やや大柄で、顔はどちらかというと欧米人ぽかった。とても㈱テーヘンには似つかわしくなかったのです。


けっきょくのところ、もしチョウさんが日本人だったら㈱テーヘンでなんか働いてないだろうと思う。外国人だからあんまり他の仕事につけなくて、工場の単純作業をパートでやるしかないのではないか。まあ、チョウさんが日本に来たのは日本人と結婚したからで、それは彼女の選択なんだろうけど。


自分の働いている工場の仕事を悪くいうのもなんだけど、好き好んで、こんなところで働こうという人はいないと思います。当のパートさん自身「こんなところに集まるのは、うちら年寄りと外国人くらいだよ。日本人の独身の娘なんてこないよ。浅野くん残念だね」なんて言っている。なにが残念だかわからないですがそう言っている。じっさいは日本人の若いひともいるにはいるけど、コミュニケーション能力に問題がある人とか、あきらかに仕事ができない人とか……。まあそれはそれで、そういう人のなかにもいい人はいると思うけど、別の話です。


あと、これは神奈川県東部という比較的求人にめぐまれている地域の事情であって、地域によってちがうと思う。この辺りだと、外食だの洋服屋とかコンパニオンとか、工場で働くにしても時給1000円以上の派遣がいっぱいあるから、普通はまずそっちに行く。そいうとこで働けないひとが㈱テーヘンにくる。