己を知る


棚卸という作業がありました。倉庫にある資材や完成品をぜんぶ数えるとのこと。おれのいる部署はなにか在庫を持つようなことがないので棚卸というのは関係ないんですけど、手伝いに行くように言われたので行きました。


おなじように他の部署から手伝いに来ている人がいました。おれはすごいことを思いつきました。これは他の部署の人たちと親しくなるチャンスだと思いました。具体的には総務の人と仲良くなって、遅刻したときにそれをなかったことにしてもらったり、経理の人と仲良くなって、ちょっと無駄遣いしたのを大目に見てもらったりしようと思ったんですけど、思っただけでした。無理、会話できない。他の人どうしは楽しそうに話しているというのに。


よく考えてみると、おれにとっては人としゃべることより、遅刻をしないこと、お金を使わないことの方が簡単なことなのでした。