携帯オーディオプレーヤーがある日常

電車の中で音楽を聴いていた。車内ではゴツイ体をして口のまわりが青いオネエチャンが注目をあつめていた。カマ? と誰もが口にだして訊きたがっているように思えた。


それとは別に、僕は、僕と同じようにイヤホンを耳に挿入しているオンナノコが気になっていた。髪、服などにこだわりが見て取れた。それでいてセンスを強く主張しているわけではなかったので、車内で僕だけが彼女の魅力に気付いたかのような気分になった。そしてもっと知りたいと思った。


僕は携帯オーディオプレーヤーで周囲を検索した。オンラインになっている人が、半径50m以内で僕以外に2人いた。どちらがオンナノコか判らないし、両方ちがうかもしれない。2人とも公開設定になっていたので、それぞれ再生中のプレイリストを見ることができた。


1人は僕も知っているアーチストを聴いていた。もう1人のほうのリストには、知らない曲が並んでいた。知っているアーチストは僕はあまり好きじゃなかったので、オンナノコが聴いているわけがないと思った。だから、知らない曲のほうのひとつを選んで視聴してみた。曲の説明は省くけど、僕好みの曲だったので、オンナノコが聴いているのにちがいないと思った。


電車のドアが開いて、注目をあつめていたオネエチャンが降りていった。オンナノコもちらりとそちらに目をやって、プレーヤーに目を戻した。


僕はどうしても確かめたかったので、半径50m以内にだけに届く通信でメッセージを送った。
「今の人やっぱり男だったのかなあ?」
オンナノコが笑いをこらえているのを見て、僕は満足した。




ということができるサービスはもうすぐなのかな?