やっぱり、おもいきって映画を観てきた、『ゲド戦記』を。


事前に、ネット上にある感想をいくつか読んでいた。「まあまあ良かった」という感想と、「悪かった」という感想の両方を見た。「すごく良かった」というのは見かけなかった。たまたま読んだものから受けた印象としては、「まあまあ良かった」と云っている人は、映画の主張や結末を評価していて、「悪かった」と云っている人は脚本や映像が駄目だったと云っているように思えた。


そういうことからおれは、この映画は主題、言いたいことは良いが、アニメ映画としては退屈な作品なのではないかという予想をしていた。そしてそれを確かめたいと思っていた。


で、実際に観た感想は「意外と面白かった」だ。

「かぎりある命だからこそ大切に生きる」

「心の闇から目をそらしてはならない」というようなことが語られていたと思う。このようにおれがただ言葉にしただけでは「ふ〜ん」だ。主題を、物語と映像を使って、いかに実感をもってわからせるか、伝えるか、というのが映画にとって大事なことだと思う。しかし、この映画でもやはり言葉での説明ばかりが目立っていたように思う。テルーが説教くさい女子になっている。説教くさい女子は嫌いではないが。

途中で退屈するようなことはなかった

話のテンポは程よかったと思う。アレンが父を殺した理由と、テルーと竜の関係が説明不足な件については、別になくても良かったが、説明がきちんと描かれていればもっとよい映画になったかもしれない、もしかしたら感動したかもしれない、おしい、とは思った。

各キャラクターには好感が持てた

感情移入するには至らなかったが。声優について不満はなかった。クモ役の田中裕子さんのスゴミはとてもすごかった。

ときどき絵がひどかった

背景が、緻密さのない安い絵画を貼り付けただけのようで、そこに空間がまったく感じられないようなシーンがいくつか見られた。


キャラクターの線が、一定の太さで引かれているように見えた。(マジックの中細くらい) アレンの顔、表情がくずれるときは、はっきりいってヘタウマ漫画のレベルだった。だから、近年の低予算でつくられたTVアニメのように見えてしまった。そんな中で、クモは良かった。なぜかプロメシュームを彷彿とさせた。

動きは良かった

ハヤオ監督作品ほどではないが、要所要所でよく動いていたと思う。


以下はちょうネタバレ


影アレンの方が実は健全な精神であったということには、ハッとさせられた。影は悪い奴だと思っていたので。


クモは、テルーに止めを刺されて殺されたようだったが、そうだとしたら納得がいかない。なぜ殺さねばならないのか。改心させて、のこりの短い人生を生きさせるべきではなかったか。荒地の魔女のように。それができないのなら、せめて自滅という最後にしてほしかった。